7
彼と初めて出逢ったのはいつ?
あの時、私はあいつの事を本当に魔法が使える奴だと信じ込んでいた
あれは私が小等部の時で彼が中等部1年だ
寒い寒い、真っ白いモノが風に吹かれ宙に舞い
窓から見る辺り一面を白く染め上げていた
お父様から3年前の誕生日にプレゼントして貰った置き時計
大切に壊さぬようにベットサイドに置いてある
だが今日に限っていつもの時間に音が鳴らない
何が原因なんだろう??
折角、お父様から頂いたものなのに・・・・
「どうしよう・・・・」
カガリは不安の色を隠せない
こーいう時、頼れるのが優しい兄だ
なんでもこなす彼はカガリにとっても自慢の家族だ
その日は午後からキラの友達が来るという話は聞いていた
「キラ〜時計壊れちゃったよ」
ノックもせずに、兄の部屋へ顔を出す
「・・・・・誰だ?」
期待していた言葉は返ってこない
そこにいるべき兄の姿はどこにもなく、
代わりにと言っていいのか群青色の髪をした少年がコチラを驚いた表情で見つめていた
「キラの友達??キラは?」
不思議とカガリは吸い寄せられるように中へと足を進め、彼の前にちょこんと座った
゛キラは?゛の一言に察しがついた少年はカガリが誰だかすぐに理解できた
「俺はアスラン キラの友達」
「アスラン?」
「そう 君がキラの妹さん?ヨロシクね」
「うん、よろしく」
とても優しい瞳で笑う人
心の中が温かくなった
「でもビックリした キラが出て行ったとたん、金色のお姫様が現れたのかと思ったよ」
「??何言ってるんだ?」
子供をあやすように、ポンポンと頭を撫でられ苦笑される
「君がお姫様に見えたんだ」
アスランがそういうとカガリは頬を桃色に染めた
「キラは外に飲み物を買いに行ったんだ 何か用だった?」
「あ、うん・・・・・」
スッと手に持っていた時計を差し出す
カガリの遠慮した表情を見れば何が言いたいのかわかる
「見せて?」
アスランは気にせずソレを受け取った
小柄ながらにも金の装飾が縁取られ、時間になれば中にある人形が動き出す仕組みのものだ
「ああ、ネジが飛んじゃったのか・・・」
「直るのか?父様から誕生日に貰った、大事な・・・大事なモノなんだ・・・」
歳相応のあどけなさと琥珀の瞳と金の髪
小さな身体で懸命にこちらを見つめてくる様は、本当にお姫様のようにかわいらしい
なんとかしてあげないと・・・・
アスランはキラの部屋に置いてあった工具箱に手を伸ばす
「ああ、簡単だよ」
不安な気持ちを吹き飛ばしてくれるような笑顔
数分のうちにアスランはカガリの大事な時計を直してしまった
「うわ〜すごいな!!キラより早い!!」
大した事じゃないのに、そう言われると照れくさい
さっきまでは心配全開だったのに、カガリのコロコロ変わる表情に惹き付けられる
「そうだ、名前は?なんていうの?」
「あ!」
そうだった!!と言わんばかりにカガリは驚いた
時計の事で頭がいっぱいだったのだ
「私はカガリだ」
「そう、いい名前だね」
「ん」
コクリと照れたように頷く
家族以外の人にそう言って貰えるのは初めてだ
カガリはこの時初めて異性を意識した
「今日はアスラン来るのか?」
「別に用はないけど・・・・何、カガリってばアスラン気に入った?」
「なっ何言ってんだ!!ちがうからな!!」
真っ赤になって全否定する妹をみて可愛らしく思う
兄としては自慢の大切な妹だ
アスランも彼女の事を気に入ってくれたようだし
キラは鼻高々であった
「この前アスラン言ってたよ カガリの事」
「え?」
俯く顔をパッとキラの方へ向ける
「カガリに会えて嬉しかったって 自分も兄弟が欲しかったなってさ」
「なんだよ・・・・」
もう少し期待してたんだけどなぁ〜
まぁ、初めて会ったんだし、無理ないか
考える事といえばアスランの事ばかり
アスランに誉められるのが嬉しくて
彼に話し掛けて貰えるのが待ち遠しくて
「やぁ、カガリこんにちは」
「アスラン!久しぶり!!」
彼が家に遊びにくれば、必ず顔は出して挨拶をする
いつもキラにやるクセで飛びついてしまう
彼も始めは恥らっていたが、
それが彼女の愛情表現の一つなのだと割り切ればどうってことはない
「髪の毛伸びたね」
「そうか?」
ちょっとは女の子らしさを出そうと思い伸ばし始めた髪
キラと同じ男の子でも、それに気がついてくれるアスラン
見てもらいたい人に言われるだけで心が温かくなる
「アスラン〜あまりカガリをたぶらかさないでよ?」
「何言ってるんだよ!」
「心配性だな、キラは」
自分が中等部に進学するまではキラの部屋に遊びに来るのが楽しみでしょうがなかった
同じ中等部にはたったの1年しか時間を共有出来なかったものの、
それ以外の場所で育んだ時間は大きい
キラも交えて まるで、ずっと昔からの幼馴染だったような錯覚に陥る
このままずっと、こうやって3人で変わらずに・・・・・
それが小さな彼女の願いだった
back next
2012/01/29