5
「昨日、キラから電話があってな」
「え〜久しぶりじゃない?!」
キラという名前にフレイは目を輝かせた
なぜなら、彼女は昔からカガリの兄のファンだった
自分もあーいう兄が欲しい!
だとか、恋人になる!
とか、彼女の容赦ない行動に中学時代はカガリ自身も苦労した
「就職してからずっと忙しいっていってたもんね」
お弁当を口に運びながら三人娘はキラの話に花が咲く
「あら、キラ君元気なの?」
そこへ通り縋ったマリュー先生が声を掛けてきた
彼女は紛れもなくカガリ達が在籍していた時からこの学校にいる
二つ上のキラが1年生の時に新任教師としてやってきて、
2年生からずっと彼の担任を担ってきたベテラン先生だ
ちなみに、彼女は国語教論でもある為、現在はフレイの担任でもある
「遺伝子の研究してるんで、中々会えないんですけどね」
「あらあら、大変ね じゃぁ、家にも?」
頬に手を当てて心配そうに尋ねる
「ここずっと・・・・ですね」
「教え子が優秀だなんて先生も鼻高々じゃない!!」
「そうね、でも 彼が在籍していたのは人生でのたったの三年じゃない」
「でも、キラは先生のこと尊敬してましたよ?」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」
「今度連れてきますね」
カガリは嬉しそうにそう言った
昼ご飯が終わり、午後の実習に突入
アスランとカガリは5時間目は授業が入っていない事を良い事に
アスランは自身の教材をまとめ、カガリは今までのノートの整理をし
終わり次第、彼の手伝いをした
「ザラ先生、他に何か手伝う事は?」
教材を開き熱心にチェックしていた彼は漸く顔を上げカガリの方を見た
「ああ、ありがとう じゃ、明日の小テストを人数分コピーしてほしいんだが・・・」
「わかりました」
書類の中から目的の物を見つけるとカガリに渡す
用紙を受け取り壮快な足取りでコピー機へ向かう
ああ、私って仕事してる!!
今日は天気もいいせいか、やたらと機嫌が良いカガリの姿があった
「?」
そんな彼女の後姿をアスランは眉間に皺を寄せながら不思議そうに見つめる
気のせいだろうか?
彼女の機嫌がやけに良い気がする・・・・
「今日は機嫌がいいのか?」
「見えるか?」
「ああ」
トントンとコピーし終えた用紙を綺麗に整えアスランに手渡す
「キラから電話があったんだ」
「そうか」
「何だ、淡白だな」
「いや、君らしいなって」
「?どーいう意味だそれ」
「キラ以外に男性との接触がないって」
その一言がカガリの神経を逆撫でした
「なっ!!」
セクハラ発言だぞ!!それは!!
「私だって子供じゃないんだ!!男の一人二人いたさっ!!友達だっている!!」
あまり大声で話してよい話題ではないので、最小限声を押し留めアスランに突きつける
「・・・・・・・・そうか」
「アスラン?」
ちょっと落ち込んでる?
まさか・・・・・・・な
自惚れちゃ駄目だぞ、自分
こうして、定時を迎え残業するアスランを残しカガリは先に帰ってきた
帰宅後、食事もとらないまま、転寝をしてしまったカガリだが
無機質な電子音によって気持ちのよい眠りから起こされた
「ん〜誰?」
携帯の着信音が鳴り響く
手にとってみるものの
知らない番号
恐る恐る通話ボタンを押してみた
「もしもし?」
『あ、カガリ?』
「アスラン?!」
『何すっとんきょな声だしてんだ』
「だ、だって・・・」
だって、これって緊急用の電話なんじゃないのか??
プライベートでなんて聞いてないぞ!!
『あ まさか、この前渡した紙に書いた俺の番号まだ登録してないんだろ』
「う」
図星をつかれた
あの後バックから出してそのままテーブルの上に置きっぱなしだ
別にワザとじゃなくて、ただ無くしちゃいけないものだと思ってすぐ出した
そして、肝心な登録をしないまま過ぎてしまったのだ
『まぁ、カガリのことだからな』
「なんだよそれ」
『今夜、暇か?出かけないか?』
ドクンと心臓が跳ね上がる
彼と出かけるだなんて初めてのこと
「暇だけど・・・でも」
『でも?何かまずい事でも?』
「いや・・・・」
『じゃぁ、決まり 仕事終わり次第 俺が迎えに行くよ』
「家分かるのか?」
『当たり前だ 実習生名簿があるだろう』
ああそうだった
何を期待しているんだ
「わかった、ただ、出る時には一度連絡をくれ」
『了解 じゃぁな』
そういって電話は切れた
まだ心臓がドクドクいってる
どうしちゃったんだろう私の心臓
寿命が縮むんじゃないかって思っちゃうよ
彼から貰った紙につづられている番号
彼と自分を繋ぐ唯一のモノ
カガリはギュッと携帯を握った
back next
2012/01/29