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「う〜目がショボショボする・・・・」



目を擦りながら、カガリは起き上がり水を飲みにキッチンへ向かった
あれ?なんで服のままで寝てたんだ?
ペタペタと素足でフローリング歩きながら、ふと疑問に思った
コップいっぱいに水を汲み、一口含んだその時だ



「大丈夫か?」



思わず口から水を噴出しそうになった
背後からの男性の声
しかもとてもよく知っている方の声色
いくらなんでも朝っぱらから聞くと毒だ



「なななななっ なんでお前がココにいるんだよぉ〜っ?!」



カガリは慌てて振り返り、ソファから起き上がったアスランを指差した



「ひどいな カガリが帰らせてくれなかったんじゃないか 今日休みだからよかったけど」
「そーいう問題じゃない!!帰らせないって 私がっ??!」



今のカガリは茹蛸のように耳まで真っ赤になっていた
アスランはというと、半ば彼女を見て面白おかしく笑っている



「送ってきたのはいいけど、君はあの後、夢うつつの中"行かないで"ってさんざん泣いてたんだよ」
「そっそんな・・・・!!」
「仕方ないからソファを借りた」



アスランだっていたって健康男児だ
昨晩は緊張と自制心の戦いであまり眠っていないらしい
若い女性、まして己と微妙な関係のカガリ
しかもあんなに激しくキスをしておいてお預け状態なアスラン
彼女がすぐ隣りの部屋で眠っていたというのに
平然としていられるワケがない
姿が見えなかったのがせめてもの救いだ



「そっか・・・・ゴメン」
「いや、それよりおなかが減った」
「何か作るか・・・・・」



時計の針はもうすぐお昼を迎えようとしていた
着替えを終え、カガリはアスランにタオルを渡し、顔を洗いに行かせ
パスタと冷蔵庫の中から材料を取り出し料理を開始した
料理が出来上がる頃に
不意に来客ベルが鳴った



誰?



「カガリ!!」
「キラ!!どーしたんだよ!!」



慌てて兄の下へ駆け寄る



「電話で話したろ 近くまで来たからさ カガリがいるのに素通りなんて出来ないだろ?」



そう言ってキラはカガリの前に買ってきたアップルパイを差し出す
自分はなんて出来の良い兄を持ったんだろう



「さすがキラv」



カガリは目を輝かせてキラを誇らしげに見つめた
忘れてたなんて口が裂けてもいえない
それどころじゃなかったんだよ!!と言いたいところだが、
実の兄にアスランとの事を話すのはちょっと気が引けた



「あれ?どーしたの?」



キラはカガリの泣いた後を指でジェスチャーする



「ん、何でもない」
「そう?」
「仲が良いのも良い事だが甘えさせるなよ」
「アスラン〜」



嬉しそうに微笑むキラを横にカガリはキッとアスランを睨む



(あ、マズ・・・)



一人暮らしの自分の部屋にアスランがどうしているのか
キラに疑われたらどうしようと心配になった
が、そんなことを打ち砕くかのようにキラは平然と、むしろ居るのが当たり前のように彼に話し掛ける



「や、アスラン こっち来てたんだ 調子どう?」
「キラ?知ってたのか?!」
「うん、メールとかでやりとりしてるし ただカガリの担任になるとは驚いたよ」
「なんだよも〜」



カガリは思いっきり肩を落とした
手土産を彼女に渡すと、キラは中へ顔を覗き込む



「あ、いい匂いがするね」
「昼御飯作ってたんだ キラも食べてけば?」
「じゃ、ご馳走になろうかな」















カガリ手作りのパスタにアスランは美味しそうに食べてくれた
これにはキラもカガリの腕前は素晴らしいと後押しする
昼ご飯を食べ終え、キラが持ってきてくれたアップルパイを切り分け
コーヒーと共に人数分テーブルに出す



「キラも来たことだし、丁度良いな」
「アスラン?」
「さっきの話だ これはキラにも関わりのある事だ」
「もしかしてアレ?」



キラはアスランの話がすぐ理解できたようで聞き返す
カガリだけが理解していなかった



「なんだよ、はっきりしてくれよ どーしてキラが・・・」
「もしかしてアスラン、まだアノ事話してないの?」



眉間を寄せ、不満げにキラが尋ねるとアスランは黙って頷いた



「まったく 昔から世話の焼ける・・・・」



キラは一人文句を言いながらもカガリを見やる



「キラ・・・」



カガリは怯えたようにキラを見つめた
そんな彼女を察知してかキラは無言で頭を撫でる



「あのね、カガリ ラクスの事は知ってる?」
「うん 同じ学校の先生でアスランの婚約者」
「あ、そこ訂正 元婚約者ね」
「えっ?!」



キラの言葉に奇声を出してしまった



「つまり婚約解消 今、ラクスは僕と付き合ってるんだ」
「えええええぇ〜?!」



カガリはあまりのショックに頭を抱えた



婚約解消って・・・・・



「何をやったんだよ!アスラン!!」
「おいおい、キラ・・・・・カガリのやつとてつもなく勘違いしてないか?」



説明不足だと言わんばかりにアスランはキラを睨んだ



「単刀直入すぎかな?つまり、アスランとラクスは元は親が決めた婚約者同士だったんだけど」



キラはジェスチャーを兼ねてカガリに説明を始めた



「当人同士は全然その気がなくて、僕とラクスが結ばれて、二人は親に直訴したってワケ」
「どーしてキラが??」
「それはラクスの口から直接聞いた方がいいんじゃない?」



その方が惚れられた男として嬉しいしね
とキラは照れながら言った



「というわけで、俺がラクスとデートしてたっていうのも」
「僕の昇進祝いのプレゼントを買いに付き合わされてたんでしょ?」



そういえば、キラからのメールが来たのも同時期だった
いくらカガリでも実の兄からの話に耳を傾けないわけがない
嘘を言わぬ瞳
だてに同じ血を通わせていない



「わかった・・・・・・ただし、明日ラクス先生に聞くからな」
「かまわない」



カガリはアスランに言い切った






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2012/02/12