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今日も天気は良好で、誰かさんのどんよりした心の中とは大違い
ランチを食べた後、自己採点シートを記入しているカガリを他所に
ミリィとフレイは屋上に来ていた
「あの二人お似合いよね」
「もし本当なら、カガリは・・・」
「・・・・あの子、何気にザラ先生のこと気に入ってるし・・・・」
「学生時代にあの二人、なにかあったって・・・」
「そうなの?じゃぁ、今までカガリが言う忘れられない人って・・・」
カガリの気に入っているような態度はあからさまで
ザラ先生も優しい人柄なせいか、そんな彼女を気にかけているのは目に見えてわかる
二人がどこまで本気なのかはわからないが、過去に何か合ったとは聞いていない
「本人が詳しく話してくれてないんだけど・・・・・好きだったことは確かじゃない?」
「なら尚更、あの話言わなくて正解だわ」
先日の出来事を振り返ってフレイはうんざりする
ただ、カガリの気持ちを弄ぶようなら許さない
それだけは彼に言いたいところだ
「それはフレイが言いそうになったんじゃない」
「わ、悪かったわ ちょっとした弾みよ でも隠し事って・・・・」
ミリィとフレイの視線の先には、中庭で談話するアスランとラクスの姿があった
二人の世界には入れないそんなムードも沸いてあるようで
「何見てるんだ?」
「っカガリ!!」
「終わったの?!」
「うん あ〜いうの嫌いでさ〜」
鉄格子に寄りかかっていた二人に並ぶようにして駆け寄る
「あ、ザラ先生とラクス先生じゃないか」
不幸にも彼女の視線に彼らが入ってしまった
もっとも、自分達が覗き見ていた場所なのだから当然な結果だが・・・・
「ええ、そうね」
横を見ても、カガリの表情はあまりよくない
なんとなく不愉快な気分だ
「カガリ、聞いた?」
「フレイ?!あんたっ・・・・」
「??何」
「いいのよ!こーいうのははっきりさせとかないと、カガリが可哀想じゃない!!」
突然の二人のやり取りに訳がわからない
ミリィの手を振り解き、カガリの肩を掴む
「いい?ラクス先生はザラ先生の婚約者だって・・・・・他の先生が言ってたの」
「なん・・・・・て・・・」
何を言って・・・・・
どうして、そんなに怒ってるんだ?
「もう、あんた見てると辛くて・・・・」
足がガクガクする
フレイの言葉が信じられなくて
嘘だと言って欲しくて
「だから・・・もう追いかけるのはやめにしよ?」
決定的なその言葉に、カガリは頭を打たれたような感覚になる
「でも・・・・・・」
「いつまでも引きずってたら前に進めないってカガリが言ってた言葉だよ?」
「私だって、わかってるさ!!」
「カガリ!!」
これ以上フレイの悲痛な顔が見れなくて
その場から離れた
中学卒業からずっと一緒にいてくれた二人
心配してくれるのはわかってる
私がずっとアスランを忘れられずに
恋人すら作らなかった事を・・・
あんなに優しい友人が嘘をついてるなんて思えない
婚約者だよ
その言葉が頭から離れない
何かに集中していないと
すぐに脳裏に甦る
確かにお似合いだよ
あの二人は
誰もが羨む美男美女じゃないか
「よかったじゃないか・・・・」
カガリはポツリと呟いた
私は・・・・
私だって
アスランのこと
ずっとずっと、想ってきたのに
涙で視界が緩む
なんで思わせぶりをするんだ?
婚約者がいるのに
なんで言ってくれなかったんだ?
私に期待させておいて・・・!!
カガリはハッとした
アスランは・・・・・
一言も好きだといっていない
恋人でもない
私がその気になろうとしていたんだ
すべては自分の想いの空回り
アスランは悪くないんだ
じゃぁ・・・・・・キスしたのは?
なぜ?
あの時も、そしてこの前も
あなたはいつも逃げてしまうようで
いや・・・
逃げているのは私の方か・・・・
いつもいつも
誤魔化すのは私の方だったな
「今更遅い・・・・・か?」
『カガリ』
『しょうがないなぁ 俺が手伝ってやるから・・・・』
『カガリらしいな』
次々に浮かび上がっては
消えてゆく儚い思い出たち
あなたが笑ってくれるのを
いつも願っていた
側にいれればそれだけで・・・・・
壊れてしまった関係
壊そうとしたのは自分から?
捕らわれてしまう
深い深いエメラルド
優しさと安らぎを秘め、私を包んでくれる
思い出す度、瞳に映し出されるのは
藍い髪と翡翠の瞳
あなたはいつも微笑んでいて
私を抱きしめてくれる
素直になれない自分が悔しくて
零れるくらいのこの気持ちを
想いを伝えられない自分が惨めで
泣き叫びたいのにそれが出来なくて
はがゆくてもがいて苦しんで
見えない何かに飲み込まれる
壊れそうな自分がいて
「・・・・・っ」
暖かなモノが頬を伝っていた
私が初めて好きになった人
「アスラン・・・・」
カガリは自然に想いを言葉に出していた
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2012/02/12