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ったく、アスランの奴どこにいったんだよ!!
今日は週に一度の採点だろ〜?!
これを書いて貰わないと帰れないじゃんか!!
せっかくミリィ達と映画見に行くのに間に合わないっ
カガリはチェックシートを片手にズンズンと廊下を歩き回る
段々と機嫌を損なうのも時間の問題で・・・
彼是、校内の半分を見回したときだった
「あ」
漸く、見慣れた藍色の後姿を見つけた
「ザラ先生!!」
ちょっと強い口調で呼び止める
アスランは驚きながら、すぐさま振り返る
誰かと話をしていたようだ
ヤバ・・・誰かいたんだ
先生かな?
でも今更、引けないよな
「あのっ・・・・これ・・・」
カガリは手に持っていた紙を手渡す
ちょっと力が篭もっていたせいか、握っていた場所に皺がある
「ああ、すまない もう、そんな時期か」
「じゃ、渡しましたんで帰りますね」
カガリは彼の後ろにいる人物にも目もくれず、早々と立ち去ろうとする
「そうだアスハ先生、まだ紹介してなかったな」
「え?」
なんだよ、何を言ってるのかさっぱり・・・・・
「ラクス、こちらは私の担当の実習生アスハ先生です」
そう言われて、彼の後ろに立っていた人が一歩前に出る
「まぁ、そうでしたの」
自慢とも言えるピンクのロングを揺らしながら柔らかく微笑む
すごい綺麗な人だ!!
こんな人学校に居たっけ?!
カガリは思わず息を呑む
「せ、先生?」
「そうだ 挨拶しなさい」
「えっと、カガリ・ユラ・アスハです 宜しくお願いします」
どう対応していいのか分からないカガリは少し緊張しながらもおずおずと手を差し出した
そんなカガリの態度が分かったのか、ラクスは快く握手をした
「ラクス・クラインですわ 担当は音楽ですの こちらこそ宜しくお願いしますね」
見るからにお嬢様な感じのピンクの姫様は、言葉も仕草も正真正銘のお嬢様育ちだった
「今まで姿見たことないけど・・・・・」
「ええ、私は必要な時以外はこちらにいませんの 普段は4階の音楽準備室におりますから」
「ふ〜ん」
「アスハ先生も気軽に遊びにいらしてね」
「ありがとう」
のほほんとしたムードに飲まれそうになったが、カガリはふと気になったことがある
それはアスランがラクスを呼び捨てにした事だ
「・・・・・・」
「すまないな、わざわざ引き止めて」
「いえ・・・・・じゃ、失礼します」
「お気をつけて」
彼女にも一礼をしてその場を離れた
カガリが離れてからも、二人はなにやら話し込んでいる
それがいかにも楽しそうで・・・・・・
一瞬の出来事だったが、彼はラクスに優しく微笑んだ
カガリは無意識に思い出す
胸がチクチクする
なんか嫌だ
そんなアスランは見たくない
このまま平穏な日々が続けばいいんだけどな・・・
「カガリ今日元気なくない?」
「そうか?」
「な〜に、あんた あたしが選んだ映画が気に食わないの?」
「ち、ちがうさ!!ちょっと考え事」
「珍しい〜何?!どうしたの??」
「フレイ、いちいちカガリで遊ぶのやめなさいよ」
いつもなら、ここでカガリの爆発が起きるのに
今日に限ってそれはない
あれ?と言わんばかりに
二人は目を丸くしてカガリを見た
「あ あのさ・・・・」
おずおずとカガリは下を向きながら質問する
「音楽の先生知ってるか?」
「ああ、たまにしか顔出さないピンクの?」
「フレイ・・・あんたね・・・・知ってるわよ、ラクス先生でしょ?」
なんだ、二人とも知ってたのか
知らないのは自分だけ?
「知ってるって言ったって、まともに話した事なんかないわ」
「そうね、機会もないし挨拶程度・・・」
「そうなのか?」
「いつもザラ先生と喋ってるわよね 仲がいいらしいじゃない」
「フレイ!!」
バシっと後頭部直撃コースでミリィの鉄拳が飛ぶ
「いった〜い!!」
いくら友とはいえ、不意打ちに反論し様としたが
すぐさまカガリがザラ先生の事を気にしていたのを思い出し、ハッとする
自分の失言に彼女の顔が怖くて見れない
「大丈夫よ!!あんたといる時間の方が長いんだし」
「うん・・・・でも、私が来る前はずっと・・・」
「カガリ?!」
「悪い、今日は帰るよ」
二人を置いて、自分は先に帰ってきてしまった
早く一人になりたくて
嫌な現実から目を背けたくて
「ばっかやろー・・・・・」
弱々しい声は、儚く彼女の部屋に響いた
私が来る前にもラクス先生と一緒にいて
私がいなくなってからも彼女と一緒に・・・・・・
さっきからチクリチクリ何かが胸を刺す
アスランの事勘違いしてた
彼の事、よく知ってるし
自分が一番理解してるって、そう考えてた
当たり前だよな
離れていた分、その時間は他の誰かと共有していたわけで・・・・
私の事なんか遠い思い出の中の人
小さい頃に一緒にいた女の子としか考えてないんだろうな
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2012/02/12