色ほっぺ



カガリと出逢ったのは、あの寒い雪の日
ちょうどキラが外へ飲み物を買いに行っていた最中、
彼女が偶然にも部屋に舞い込んできた
妹がいるとは知っていたけど、わざわざ紹介する必要もないだろうし
自分もそこまで気にはしていなかった
だけど・・・・キミは僕の元へやってきた
揺れる金糸の髪と真っ白な肌
一目見た瞬間、まるで天使を思わせた



「キラの友達??キラは?」



首をかしげながら、部屋に入り俺の前にチョコント座り込む
ああ、やっぱり似ているな
真っ直ぐな琥珀色の瞳は彼と同じ



「俺はアスラン キラの友達」
「アスラン?」



彼女の小さな唇が俺の名前を復唱する
自分を認められたような気がして、ほんの少しだけ嬉しかった



「そう 君がキラの妹さん?ヨロシクね」
「うん、よろしく」



何とも可愛らしい仕草に、思わず笑みが零れてしまう



自分もこんな妹がいたら・・・・



一人っ子のアスランにとっては兄弟が羨ましかった
きっとキラのように過保護になるんだろうな
なんて、考えてしまった



「でもビックリした キラが出て行ったとたん、金色のお姫様が現れたのかと思ったよ」
「??何言ってるんだ?」



眉間に皺を寄せ、懸命に考えている
アスランは笑いながら彼女の髪を撫でた



「君がお姫様に見えたんだ」



その一言が原因でカガリの頬は桃色に染まる



「キラは外に飲み物を買いに行ったんだ 何か用だった?」
「あ、うん・・・・・」



カガリは手に持っていた時計を差し出す
実の兄に頼もうとしていた事だったが、状況的にアスランに伝えなければならなくなった



時計??



彼女の小さな掌の上にのっているものを見れば針が動いていない



ああ、壊れちゃったのか



「見せて?」



カガリが申し訳なさそうにしているのも気にもせず、
アスランは彼女の掌から時計を受け取る
よく見れば、小さいながらに高価そうな時計
贈り物なのだろうか?
彼女が大事そうにして、キラに頼もうとして持ってきたものだ
電子工作を得意とするアスラン
蓋を開けてみれば、原因が一目でわかった



「ああ、ネジが飛んじゃったのか・・・」
「直るのか?父様から誕生日に貰った、大事なモノなんだ」



懸命に訴えてくる彼女の瞳には僅かながら雫がたまっている



なんとかしてあげないと・・・・・



アスランはその思いに突き動かされた



「ああ、簡単だよ」



安心させるべく、優しく微笑むと
早速キラの工具箱を手元に引き寄せ、作業を開始する
彼の手馴れた手つきを目前に、カガリは泣き出しそうな表情から
まさに感動の顔色へと変えてゆく



「うわ〜すごいな!!キラより早い!!」



自分にしてみれば一番の簡単な作業
なのに、この子はそこまでして嬉しがるだなんて
それは大切なモノが直れば嬉しい気持ちはわかる
ただ、彼女に誉められると照れくさくてしょうがない
アスランはコロコロ変わる彼女の表情に、不思議と惹かれるものがあった
自分でもわからない けれど、彼女には笑っていて欲しい
そう願わずにいられなかった



「そうだ、名前は?なんていうの?」
「あ!」



アスランは恥かしい気持ちを抑え、カガリに名前を聞いた



「私はカガリだ」
「そう、いい名前だね」
「ん」



カガリ・・・・・・・



アスランはその名前をしっかりと心に焼き付けた
忘れてはいけない
これから先、キラは勿論の事、
ずっとそばにいてくれる そんな存在になるだろう
そんな気がしてならなかった















「アスラン、途中まで送ってくよ」
「キラ、今日妹さんに会ったよ」



いつも遊びに行くと曲がり角まで送ってくれるキラ
歩きながら、ふと思い出す



「え〜?!カガリ部屋に来たの??」



キラが戻ってくる前に自分の部屋へ帰っていった彼女
その後はずっと、ゲームをしてたから
話すのをすかっかり忘れていた



「ああ、お前に時計を直して貰いたかったらしい」
「そうだったんだ 悪い事しちゃったな」



兄としてちょっと自己嫌悪に陥るキラ



「俺が直しておいた」



そんな彼をそっちのけで、サラリとアスランはカガリの変わりに返事をする



「!!アスランが!?・・・よくカガリが許したね」
「?そうなのか??」



目を見開いて驚くキラ
意外な反応にアスランも、ちょっと動揺する



「カガリは異性とか苦手なんだよね まだ子供のクセにさ」



そんな素振りは一度も見せなかったけど・・・



記憶の糸を手繰り寄せ、金色のお姫様を思い出す
甦るのは柔らかそうな頬を桃色に染め上げ、
こちらを見上げてくる穢れのない瞳だ
アスランは無意識にカガリの姿を焼き付けていた



確かに恥らうような素振りは見せたが・・・・



普段から女の子とはあまり会話をしない彼
まして一人っ子のアスランにとって
今後、カガリの存在が女の子の代表となっていく事となる



「ふふ、可愛いじゃないか」
「ア、アスラン?まさか・・・・」



今まで異性に興味を持たなかった彼が可愛いという
キラはちょっと嫌な予感が漂った



「俺もあーいう妹とか欲しかったなぁ」



あ、なんだ そー言う事ね



心のどこかで、コッソリと安堵の息をつく



「ダメダメ、カガリは僕の妹なんだから あげないからね」
「何もそうは言ってないだろうに・・・まぁ、いいさ」



この時、まだ幼い彼らにとって"恋愛"という言葉は程遠い
今後の運命の悪戯にアスランもカガリも、そしてキラさえも
やがて二人が惹かれ合い、再び出逢う事など
思いもよらなかった・・・・・・






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2012/02/14